「余計なことまで話したかな。眠いせいだ、きっと」
「んじゃもう寝に行けよ。結局何しに来たんだよ?」
そういえば聞きそびれていた。
が、藪蛇だったらしい。ベルナルドはあろうことか俺の寝台にごろりと横になり、眼鏡を外し始めた。
「おい、ベルナルド?」
「だから、最初に言った……夜這いって」
夜這いってこういうカンジじゃないよな?
と突っ込むのも何か違う気がする。完全に寝る体勢の人間にまともな返事を期待したほうがバカだったのか。
「個室にひとりでいると、落ち着かなくて……外は暗いし……」
「夜なんだから当たり前だろ。電気つけとけよ」
「電気、つけても。狭いし揺れるし」
つまり、是が非でもここで寝る気らしい。
これ以上のやり取りは不毛だと悟り、俺は口を閉じた。ベルナルドは何枚か置いてあった毛布の一枚を勝手にかぶり、適当な姿勢を探ってごそごそしている。
やがて静かになり、もう少し経つと寝息が聞こえ始めた。ああ本当に寝やがった、このオッサン……
途方に暮れる。ちゃんと寝たようだし、部屋を交換て形で、俺がベルナルドの部屋へ行ってもいい。さすがに列車内の狭いベッドじゃ、二人は寝られないしな。……うん、そうするか。違う部屋から出てきて兵隊がびっくりするかもしれないが、たいしたことじゃないだろう。このまま眠れないよりはマシだ。
だいたい、あと何時間寝られるんだ。と、俺が頭をめぐらせて時計を探そうとすると
「う、おわああ!? ジュリオ!?」
「……はい……」