「っ、おい……」
 不意打ちで引き倒した巨体を、狙い通りソファに押し付ける。ルキーノが戸惑ったその隙に上からのしかかり、ごつい胸板に腹ばいになってもう一度キスをした。全身から伝わる体温が泣きたいくらい熱い。
 思う様唇を貪ってから、少しだけ顔を離す。
「―――勝手すぎるだろ……あんた言ったよな。俺の犬っころって―――俺のジャンって」
「……ぅ……」
 自嘲気味に笑いながらシャツの前を肌蹴ていく。目を伏せるルキーノを見ていると、また沸々と透明な熱のようなものが沸いてくるのを感じた。
「お前のだぜ? 今の俺は、アンタが作ったんだ―――ハハ、ピッカピカには程遠いかもしんねえけどよ。……ひでえ体になっちまった」
 抵抗にもなっていないような制止をする手をのけ、ルキーノのシャツも前を開いていく。
「ん、む……ふ、ッ……」
 太い首筋も割れた腹も、こんなときだってのにムカつくくらい色っぽくて、思わず舌を這わせていた。こうしてひっついてると、一週間前までと、あの話が出る前までと、何も変わらない充足感が勝手に湧き上がってくる。
 ルキーノが―――まだそういうふうに思っているのかは、わからない。
「……っふ、……っ―――俺だけかよ……」
 唇を離し身を起こして、何も言わないルキーノを睨みつける。今度は目を逸らされなかった。
「こんなになっちまうのは俺だけか!? だからアンタはそんなことが言えんのかよ! ……ああ、バカで無様なのは、俺だけだな……!」
「違う、ジャン、俺は―――」
「何が違ェんだ……! じゃああんたは、」
 言葉の途中で、ルキーノの脚を膝でぐっと割る。
 触れた質量に、安心したような、悲しいような、可笑しいような、ごちゃ混ぜの感情がせり上がってきて、声がかすれた。
「なんだよ……勃ってんじゃねえか……」
 その後何か罵倒してやりたかったはずなのに、胸につっかえて言葉が出てこない。そんな余裕なかった。
 ルキーノの上にまたがったままずるずると移動し、着ているスーツに手をかける。
「おい、やめ―――」
「こんなにしてやがるくせに……は、ん……」
 取り出したモノを間髪入れずに口の中へ咥え込む。ずるりと舌を滑らせると引き締まった下腹がびくっと震えた。
「っ……ジャン、……や、めろ」
「んぁ、ふ……」
 唾液を絡ませ唇で扱き上げ、めちゃくちゃに舐め回すが、根元までは到底入るわけがなくて、ムキになって飲み込もうとしたら軽くえづいてしまった。
「っぅ、え、げほ―――」
「おい、無理するな……」
 咳き込む口に手が触れて、零れた涎を拭っていく。とんでもなく久しぶりのように感じる触れ方に、頭の奥がじんわりと蕩けた。
 直後、はっとしたように離れようとする手をとらえ、指先をちゅっと吸う。
「ルキ、ノ……」
「く―――」
「なあ、答え、ろよ……あんたはどうしたい……?」
 濡れた肉塊を握りこんで上下させると、ルキーノは眉をひそめて息をついた。唾液のものだけではない、くち、という水音が先端から溢れる。
 それでも答えないルキーノに焦れて、その先っぽを胸元にあてがった。
「っくふ、ぅ……」
「なに、してる……っ」
「―――アンタにこんなにされて……ほんとに、俺ばっかりバカみてぇ、だ……」
 ぬめるルキーノのもので乳首を擦るたび、甘い電流が体の奥を走る。強引に嬲られて痛いくらい噛まれるときほどじゃないが、確実に下半身が熱くなり、気づくと緩く腰を揺らしていた。……やっぱり俺はバカだ……頭やられてる。
「ルキーノ、なあ、言えよ……言えって……!」