唾液で湿らせた指でイヴァンがゆっくりと中を押し広げる間、俺のはずっと勃ち上がったままだった。
「……は……ん、やれば、できんじゃねー、か……ぜんぜん、痛くねーぞ……」
「ったりまえだ、っつの……お前も、指だけで出すんじゃねえぞ……」
 なんだそりゃあ、俺がいつ指だけでイった―――と、言い返そうと、して。
 思い出した。
 あんまりおかしくって、噴き出してしまう。
「お前……なんつー昔のこと言ってんだ、よ……」
「ッ……お前だって、覚えてんじゃねえか……」
「そりゃ、なあ……まさかヤローに、んなとこ、指突っ込まれる、とは、ッ……」
 丁寧に指が引き抜かれて、体が震える。イヴァンは俺の上に覆いかぶさってひとつキスをすると、すでに復活している熱塊を腹に押し当てた。
「挿入れて、いいか」
 背骨が溶けるくらいぞくっとするのと裏腹に、ちょっとだけ笑う。
「……んなこと、初めて聞かれたんじゃねえ?」
「ああ? そんなこと……ねえだろ、たぶん……」
 自信ねえのか……
 首を傾げているイヴァンに、俺は両腕を大きく広げた。
「ほれ。……いいぜ」
 それを聞いて、イヴァンは―――
 やっぱりもう一度口づけてから、俺の後ろにそれをあてがった。
「っは、ぅ―――」
 圧迫感とともに質量が押し入ってくる。けどめちゃくちゃゆっくりで、いつもは何なんだってくらい痛みは少なかった。互いの下半身がどろどろに溶け合って、ただ熱い。
 おまけに、
「ん、平気、か……」
 途中で止めてそんなことを訊いてくるイヴァンの肩口で、俺はうなずいた。
「はは……なん、だ、コレ―――すげぇ、熱ぃ、し……いっぱい、で……―――」
 また緩々と進入が再開される。何かしら憎まれ口を叩いてやりたかったが、ぜんぜんだめだった。イヴァンの体温と匂いと鼓動に包まれて、何も考えられなくなる。こいつもそうだといいなあ、とだけ薄っすら思った。