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その大柄な伊達男が、いきなり足を止めてこちらを振り返った。
身構えるが、彼の視線はナスターシャには向いていない。
「BOI……てめえ、なんでここにいやがる?」
「アロ~。奇遇だね」
「え……」
ロイドが片手など挙げて気軽に挨拶しているのを凝視してしまう。……今この人、なんて言ったの?
「BOI? あなたが?」
「うん」
いろいろと言いたいことがあるような気がしたが、何を言いたいのかわからないまま取り残される。
「ここで何してる」
険悪な問いかけにも、あくまでロイドは態度を変えず、
「お仕事で役所の前にいたらごらんの有様だよ。状況、聞きたい?」
「結構だ」
相手にしないことに決めたのか、その幹部はさっさと身を翻した。その背中に向かってロイドが言う。
「犯人複数、要求不明、人質いっぱい。どうすんの?」
「……問題ない。すぐジュリオが―――お、来たみたいだな」
状況についていけないでいるナスターシャを素通りした視線は、通り沿いにすべるように停まった車に向いた。そこから、この幹部が連れているのとは、また毛色の違った男女が現れる。なんというか、より洗練された印象だ。
物々しい雰囲気の彼らがドアを開き、現れたのは―――
「イヴァンは無事なの!?」
ここ数日で、顔見知りになってしまった少女だった。
「ロザーリア!?」
「お嬢様……なぜここに?」
ほとんど同時に言い、なぜ知っているとばかりに顔を見られる。ナスターシャも彼と少女を見比べてしまった。先日の会話からなんとなく予想はしていたが、やはり彼女はCR:5幹部級が「お嬢様」と呼ぶ立場の人間なのだ。
少女に続き、車の中から目鼻立ちの整った青年が血相を変えて飛び出してきた。
「ジャンさん!」
「待てジュリオ、どういうことだ!?」
呼び止められた青年は、むっとした顔で男を見返す。
「何が、だ……早くしないと、ジャンさんが」
「わかった、いやそれはわかってる。なんでロザーリアお嬢様を連れてきた!?」
訊かれると青年はややぐったりと肩を落とした。ぼそぼそと呟く。
「断りきれなかった……」
「わたしが無理を言ったの。市役所で何か起きて、イヴァンとジャンとベルナルドが中にいるっていうでしょう? だから―――」
「ベルナルド―――中にいるの!?」
唐突に彼の名前が出てきて、ナスターシャは思わず声を上げた。ますます混乱したらしい赤毛の幹部が、額に手のひらを当てる。
「どうなってやがる」
「ファミリー大集合だねぇ」
「お前はファミーリアじゃない」
青年に低いテンションで冷静に指摘されたロイドは、しかし気にすることなく市庁舎に親指を向けた。
「そっかぁ、ジャンたち中にいるんだ。ピンチだね?」
含みを持った語調に、赤毛の幹部は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「お前たちには関係ない。それに、こんなのは物の数にも入らん。―――だな、ジュリオ?」
同意を求められた青年は物静かに、しっかりとひとつうなずいた。
ロザーリアが多少青ざめながら、凛と背筋を伸ばして彼に問う。
「みんなは助かるの?」
「市庁舎内に忍び込んで、中で暴れてるやつらを先に倒す。……それから脱出させます」
「うわシンプル」